彼女のシズちゃんと別れてしまい目的を失ったように感じましたが、それでも私は行かなければなりません。
そう!
ミートファクトリーです!
わざわざ西海岸まで来て車も買っちゃって、セカンドビザ取得に片足どころか腰までどっぷり突っ込んでしまっています。
今回はあの汚物ジョブの続きの話。
汚物ジョブの話▼
前回▼
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たらいまわし
【旅行記177】で気づいたことがあります。
血まみれパワフルジョブ
▼
内臓ポジション
▼
うんこ部屋
▼
胃袋ルーム
たった1ヵ月のうちに4カ所もの仕事場を経験しています。
そして白ヒゲスーパーバイザーが現れて
ちょっとこっちに来て
と私をまた連れ出すのです。
たらいまわしにされとる!
胃袋ルームなどの汚い仕事なんかもちろんやりたくないので移動は喜ばしいことなのですが、こうやってしょっちゅうポジションを変えられることデメリットだらけなのです。
まず毎回イチから仕事を覚えなければならないこと。
当たり前ですがやったことが無いので近くのその持ち場のプロに聞くわけです。
しかしその人たちももちろんいつもの作業中なので、かなりピリついています。
なぜならこの工場が1日に殺す羊の数は3000頭。
レーンのスピードは6秒に1頭なのでどこもかなり忙しい。
次に必要とされていない感がすごいこと。
ほとんどの人は入社時からひとつのポジションを任され、その持ち場のスペシャリストになります。
少なからず各々の仕事に責任感とプライドを持ち日々の仕事をこなすのです。
しかし私の場合はいつも「空いている所」に配属されては数日で移動になるので、いてもいなくても良さそうなことをやらされるのです。
と常に不安感を抱えています。
そしてたらいまわしにされることで1番のストレスが出勤時間です。
生きている羊が肉になるまでの工程で100人以上が関わっています。
吊られた羊が図の1番の場所から7番の場所にゆっくりと流れて行って、自分の持ち場に流れてきた肉に自分の仕事を施す流れ作業です。
つまりその日の1頭目が流れてくる時間が勤務開始時間になるので、最初のほうと最後のほうでは30分以上の時間差があるのです。
しかし私は毎日どこに行けばいいのか分からないため早く出勤して毎朝白ヒゲスーパーバイザーを探さなければならない。
今日はどこにしよぉっかな〜
面接時にふざけたことから工場内でケンシンと呼ばれている私は、毎朝いちばん早い時間に彼の指示を仰がなければならなかったのです。
それでも汚物部屋の時は週単位で同じ場所だったので幾分かは朝のストレスはありませんでした。
しかし胃袋ルームから連れ出されてからというもの、ほぼ毎日移動移動でまさに工場内を旅しているような『工場内旅人』と化してしまったのです。
水かけ食い倒れ人形
まず胃袋ルームから移動してきたのは図7の右のあたり。
ここはほぼすべての工程が完了してチルド室へ向かう手前。
私がここでやらされたのはお立ち台に立たされて羊の膝の関節部分にホースでチョロチョロ水をかける仕事です。
まず最初に思ったことは
この周辺には誰もいません。
また全ポジションから見える位置にいる私はさながら食い倒れ人形です。
さらに私は思うのです。
ここには人が立っていたりいなかったり。
つまり別にないならなくても良い仕事だったのです。
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食道ちゅるん
この日また私は新たな場所へ連れていかれました。
図の3番のあたりです。
頭を落とされた状態の羊が流れてきて、首から胃袋につながる食道がぴろっとはみ出しています。
その先っぽをつまんで専用の器具で食道まわりの膜をちゅるんっと剥がすだけの笑ってしまうほどラクな仕事でした。
これはマジで一瞬で作業が終わるので、おそらく工場内で一番ラクで簡単なはずです。
▼一緒に仕事したやつ▼
仕事はハードだし精神的にも肉体的にもダメージを受けているけど、この経験はいつか自分の将来につながると思っている
ハードじゃねぇし、食道ちゅるんの経験は多分なんの役にも立たないっすよ!
ピロピロ皮カット
上記の食道ちゅるんのとなりのポジションです。
こちらもなかなかラクで簡単な仕事でした。
作業内容は首のあたりのピロピロとはみ出ているような皮をシャッと切るだけです。
▼一緒に仕事したやつ▼
まずナイフで切ろうと思うなよ?
「心」で切るんだ!
1頭1頭全部違うと思えよ!?
同じ命などひとつとして存在しないのだ!
見とけ!
刃先にグーッと気持ちを込めて…
シャッ!
こうだ!やってみろ!
シャッ
こういうラクで簡単な仕事をしているやつほどよく語る傾向にあります。
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ケージ
この日私は2階のキルフロアからまたもや1階におろされました。
衛生管理のため汚物、毛皮、廃棄物などの処理はすべて1階で行われています。
胃袋部屋よりうんこ部屋のほうが良いな
もはや思考回路にだいぶバグが起きている私ですが、今回は布の軍手を渡されたのでまた違う場所のようです。
重要なポジションだからよろしくな
連れて行かれたのはとても普通の精神では働けないような場所で、私としては二度とやりたくない仕事のひとつです。
そもそも可哀想なあのかわいい羊たちはどうやって殺されているのか?
檻から出されて1頭ずつ並べられ、スタンガンをバチッ!と当てられて気絶します。
そしてその後すぐに首に切れ目を入れてフックに掛けられて、少しずつ血を抜きながらゆっくりと2階のキルフロアへ流れていくのです。
そのスタンガンの部屋がレーンの始まりであり、それを1とするならば私の今回の作業はマイナス1。
つまり生きている羊たちを逃げないようにスタンガン部屋へ1頭ずつ送る仕事だったのです!
でもこれ仕事なんですよ!
こっち来てね!?
メェェェーー!
そんな顔で見ないでください…
バチッ‼︎
脂肪こそぎ落としマラソン
これは私が住処としているワンダーインで仲良くなったカズユキ(韓国人)がやっている仕事です。
- [カズユキ]
図の6番の位置でかなり後半のポジション。
ここでは内臓を抜かれたあとの腹部内側の脂肪を取り除く作業を行います。
専用のこそぎ落とし器みたいなものでただひたすらガリガリやる仕事です。
- [謎の器具]
マジキツい
結構しんどいね…
パワーが必要なわけではありませんが、常に手を動かし続けなければならないためじわじわと肩や肘にダメージが蓄積されていくのです。
6秒に1頭と説明しましたが、だいたいのポジションではそのうちの2〜3秒で終わるような作業ばかりなので一瞬一瞬の体力の回復があり、そこまで体が壊れるような感覚にまではいたりません。
また同じ作業を複数人でやるような場所もあるため、話し合って交互にやったり一定時間で交代したりと工夫して仕事ができるのです。
しかしここはまるで終わりのない長距離走のようなポジション。
1秒たりとも休む時間も無ければ、カズユキと自分のふたりしかいないので交代でやるということもできないのです。
ここは新人がよく送られてくるポジションのようです。
カズユキが言うには「初日に配属されたら逃げ出すポジションランキング1位」らしく、多くの人間が2日目から来なくなるのを見てきたそうです。
(同率1位は私が初日にやったハンギング)
長くやっているカズユキは右腕だけ異常に太くなっています。
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フロアボーイ
他にもいくつかのポジションをたらいまわしにされ、また以前経験した場所へ戻されたりと、2ヶ月間は持ち場が定まりませんでした。
さぁ〜て今日はどこにしよぉっかなぁ〜!
聞こえとるぞ
私は持ち場が定まらないのでスーパーバイザーに毎日やることを聞きに行きます。
そのためこの『鬼の白ヒゲ』とも表されたジジイと私はだいぶ仲良くなってきていました。
様々なポジションを経験しているうちにある特殊な部隊がすごく気になりはじめました。
皆が白い帽子をかぶっている中、赤の帽子をかぶって、フロアワイパー(かっぱぎ)を持って突っ立っているだけのふたりがいるのです。
あの人たちは何なの?
みんなあれに憧れてるよ
- [だいたい喋ってるフロアボーイズ]
そのフロアボーイの仕事は基本的には地面に落ちた脂肪をチャチャっと側溝へ送って、滑らないようにするという仕事です。
他にも各ポジションを見てまわって地面に落ちている廃棄物が目立って多くなってきたら、道具を使って掃除するというかなりのんびりとした仕事です。
ほとんどの仕事はレーンのスピードに依存しているため、同じことの繰り返しにより皆さん精神的におかしくなってしまいます。
しかしフロアボーイは自分のペースでやれるというところが非常に魅力的なのです。
シンに向いてるかもね
(体力ないし)
でもあのふたりの誰かが辞めない限りあそこは空かないよ
しかし!
白ヒゲの言うことを毎日聞いて真面目に働いてきたため、多少は意見できる立場にまで私は成長しているのです!
私フロアボーイやりたいんですけど
お前はうんこ部屋がお似合いだよ
せめてもうこのたらいまわしをやめて欲しいっす!
どこかひとつのポジションやらせてくださいよぉ〜!
フロアボーイやる?
人をすぐクビにしてしまうのでかなり恐れられていた白ヒゲスーパーバイザーですが、2ヶ月も真面目に文句も言わずにこき使われて来たおかげで意見することができたのです。
次の日からなんと私はフロアボーイになってしまったのでした。
ラクチ〜ン!
いろんな仕事をやらされた結果、最高の仕事を手に入れたのでした。
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