西オーストラリア州のバンバリーに住んでいます。
セカンドビザ取得のためにミートファクトリーのお仕事が始まりました。
- [超パワフルジョブ]
グロ過ぎるポジションに配属されましたが、そんなことなど気にならないくらいの肉体的限界が来てしまいました
と思っていた頃、辞める寸前のところでポジション移動。
決してラクではありませんが私に向いているナイフハンドの仕事をもらい、なんとか辞めずに続けられそうです。
しかしそんなうまい話がそう長く続くわけはありませんでした。
前回▼
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領土問題勃発
肺を切るときはもっと根本から…
こうだ!
ズバーッ!!
よろしくね!
(グロい…)
面接時に私がふざけたせいで工場内ではケンシンと呼ばれるようになったこの私。
右肩が上がらなくなるほど体を酷使した地獄の『ハンギング』という仕事から内蔵を切り分けるポジションに移り毎日忙しく働いています。
▲私の持ち場の位置は5番。
4番の位置から内臓が届き、そこで肺、肝臓、胆嚢、腎臓などを切り分けたり脂肪を取り除いたりする仕事です。
パワフル系よりも手先でわちゃわちゃやるほうが私には向いています。
移動して5日ほど経ったある日、いつものようにタイムカードを押して持ち場へ向かったところ見慣れない韓国人の女が立っていました。
おはようございます
彼女に英語で話しかけても返事がなく謎の言葉を発するのみ。
本来ならそんな人は無視しておけばいいのですが、こればかりはそういうわけにもいきません。
何故なら私とまったく同じ装備で(ナイフや金属グローブなど)私の持ち場に立っているからです。
ここは私の持ち場なんですが…
誰かを呼び始めた韓国女。
どうやら通訳のためにひとり他の韓国人のを読んでいるようです。
そして予想だにしなかった事態に。
ていうかこの女の人も初めて見ましたよ
ニダニダニダニダ!
彼女は一回辞めたんだけど、また今日から戻るらしいんだよ
だからどっか違うところに行ってくれ
そ…そんなばかな…!
ていうかそういうのはスーパーバイザーが決めることでしょ!
ニダニダニダニダ!
ニダニダニダニダセヨ!
分かんねぇのか⁉︎
分かりましたよ!
領土問題勃発!
朝っぱらから感情的になる彼らに負けた私はマネージャールームへ行き状況を伝え相談しました。
うわ…あのムスメ出戻りかよ…
参ったな…
そうでしょう?
(クビにしましょう)
せっかく自分に合ったポジションを与えられたのにここで仕事を奪われるとまたあのハンギングのような過酷な場所へ戻らされる可能性があるため、ここだけは引けません。
しかし…
ケンシンはちょっとここで待っててくれ
違うところに連れて行くから
カムサハムハムハムニダ♡
韓国軍との領土問題に敗れた私は持ち場を移動することになってしまったのです。
ランナールーム
数分後私の元へ戻って来たスーパーバイザーに呼ばれてついて行きます。
2階じゃないぞ!
こっち!1階だ!
先ほどまでいた私の持ち場(だった所)である羊のKill Floor-キルフロアは2階にあるのですが、何故か1階の小さな部屋に連れて行かれました。
今日からランナールームだ!
アリという男がここの責任者だからヤツに聞いてくれ
じゃあよろしく!
そう言い残し去って行くスーパーバイザー。
取り残された私は言われるがまま部屋に入ろうとドアを開けると、ものすごく独特で変なニオイが充満しています。
ひとことでいうとくさい!
さっきまでいた2階キルフロアの血生臭い動物のニオイとはまた違った強烈な草のようなニオイです。
そして三重になっているドアを開けて開けて開けて、着いた場所はまさに地獄絵図。
なんとここは「腸を処理する部屋」だったのです!
つまり羊のうんこまみれ部屋です!
6畳〜8畳くらいの狭いその作業部屋にデカイ機械がドンとひとつ置かれ、3〜4人の作業員がただひたすらに腸を捌いています。
内容は
2階から腸のカタマリが流れてくる
▼
腸から便を取り除く(機械)
▼
綺麗に洗浄(機械)
▼
軽量して箱詰め、チルド部屋に流す
という仕事です。
そのほとんどが機械の仕事であるため、人の手が必要な工程に数人のスタッフが入ります。
基本的には4人で二手に分かれます。
ひとりは奥で箱詰するだけの超簡単作業。
残りは機械の手前で、機械に腸を流すために小腸をフックに引っ掛けるという作業です。
衛生管理のために2階の肉の部屋と分けられているので、ここ『うんこ部屋』は1階にあるのでしょう。
一定のリズムで2階から腸が流れてきます。
ベチャッ!
…
ベチャッ!
…
ベチャッ!
直径40cmほどで数kgはあろう腸の塊が煙突のような管を通って落ちて来きます。
このまわりに3人集まりひたすらフックに掛けるという作業です。
正直肉体的にはこれまでの仕事よりもラクだったのですが、とにかく汚くてしょうがない!
殺したての血!
内臓まわりの液!
リキッドタイプうんこ!
それらを洗浄する水!
何の汁か分からないヤバ汁を頭から足先までガンガン浴びるのです!
- [何も気にしない先輩方]
うん汁ですぞ⁉︎
またたまに破損している腸が勢いよく落ちて来た場合は最悪で、それはもうモロに顔面にうんこを浴びます。
ベチャッ!
そりゃ時給が高いわけですわ!
まさか私の人生でうんこまみれになる仕事をする日が来るとは思ってもいませんでした。
しかしその作業自体はラクそのもの。
とにかく汚いことを我慢しさえすれば給料はもらえるのです。
どれだけ汚い仕事でも、肉体的にしんどいことよりはマシかなと、下方比較の法則に乗っ取った感情が芽生えて来ました。
できることならこれじゃなくてナイフで肉切る仕事したいですけどね⁉︎
そしてここで働きはじめて2週間が経ちました。
だいぶこのうんこ部屋に慣れてきてうんざりしはじめた頃。
またもやヒゲモジャスーパーバイザーが私のところへやってきたのです。
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胃袋ルーム
仕事は慣れたか?
(本当はすっごい嫌なんですけどね)
おぉぉぉぉぉ!!
やった〜!!
どうやらもともとここで長くやっていた人間が長期の休みをとっていたらしく、その人が戻ってきたので私は移動になるようです。
「やっとこの超汚れ仕事から解放される!」という喜びと「またヤバい仕事をさせられるのかな?」という不安が混ざり合い、ドキドキしながらスーパーバイザーについて行くこと10秒。
ランナールームのすぐ隣の部屋に入れられたのです。
仕事は中のやつに聞いてくれ!
じゃあな
スーパーバイザーは忙しいのかそう言い残し去って行きました。
そしてドアを開けると度肝を抜かれる私。
胃酸のあの強烈なニオイです!
不適切な表現かもしれませんがゲロ部屋だったのです!
ここは羊の胃袋を処理する部屋。
2階から流れてきた胃袋にナイフで切れ目を入れて、胃袋と中身を分別して廃棄するというシンプルなポジションです。
とにかく内容物のニオイが人間のそれに酷似していて、今にも『もらい内容物』してしまいそうなほどの悪臭。
あとにも先にもこんなことを言ったことはありません!
うんこのほうがマシだったぜ!
しかし逃げ出すわけにはいかないのでおとなしく指示に従い、作業に取り掛かるのでした。
作業場は私を含めて4人です。
工場内では帽子とマスクをしているため誰が誰だか分かりません。
お互いしばらく気づかなかったのですが、なんとここには私が住処としている宿ワンダーインでとっても仲がいいデンマーク人のスネオが働いていました。
ここに来たんだ…
魂が抜けきっとるじゃないの!
もともと無口で陰キャラ丸出しのスネオですがワンダーインでは毎日ワイワイ楽しくやっています。男の私でも目を合わせられないほど爽やかで目が透き通ったイケメンです。
しかしそんな男がこの胃酸のニオイが充満している場所で、ゲロまみれになりながら働いていたのです。
彼は2階のキルフロアで全工程が終わった肉の塊をチルドフロアに押し込むという仕事をしていたはずです。
それ!
私も経験済みっす!
この工場の韓国人の力は凄まじいものがあります。
私やスネオが働いているラム(羊)のフロアの半分以上がワーホリで、そのほとんどは韓国人だったのです。
日本人は私とビーフフロアのどうぶつくんだけ。
人事採用のマネージャーにも韓国人がひとりいるくらいなので、朝の韓国女のように英語が話せなくても働けるというわけです。
そして約1週間お互いを励まし合いながらスネオとともにこの胃袋ルームで働きました。
するとまたもやあの男が現れたのです。
たらいまわしのジャパニーズ
デンマークのスネオ!
いるか⁉︎ちょっとこっちこい!
こいつらふたりと交代ね!
移動だ!
スーパーバイザーはまた新しく入社したのであろうユニフォームが綺麗なふたりを連れてきて、私とスネオを連れ出します。
韓国人の巨人が辞めちまったからすぐ行ってくれ
お祝いだよ
お前は…(書類をペラペラ…)
ふふふ
ちょっとついてこい!
また変な所に連れて行く気じゃないでしょうね⁉︎
再び私はヒゲモジャ野郎に謎の仕事をさせられるのでした。
ほとんどの人が入社と同時にひとつのポジションを任される中、稀に『マルチ』と呼ばれてるしょっちゅう持ち場を変えられる不運な人がいるそうです。
日本と違って従業員が何日も無断で休んだりするのは当たり前なオーストラリア。
また喧嘩して辞めたりきんにく君のように帰らされたりと毎日毎日各所で欠員が出るので、そういう場所にピンポイントで入れられてしまう人のことです。
まさにそれがこの私。
それからというもの様々なポジションをたらいまわしにされるのでした。
しかしこれもすべてセカンドビザ取得のため!
2nd Working Holiday Visa
通称セカンドビザ。
オーストラリアのワーホリにのみ適用されるシステムで、政府指定の農場や工場で88日以上働くともらえる2年目のワーホリビザのこと。
セカンドビザを取得するまでの日数カウント88日を終わらせるための我慢です。
そしてセカンドビザを取得して彼女であるシズちゃんと再会するためのセカンドビザです。
しかし不運なことは続くもの。
このミートファクトリーでの仕事はおろか、海外生活自体を考え直すことになるような事件が起きたのでした。
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