2nd Working Holiday Visa
通称セカンドビザ。
オーストラリアのワーホリにのみ適用されるシステムで、政府指定の農場や工場で88日以上働くともらえる2年目のワーホリビザのこと。
セカンドビザ取得のためのファームジョブを求めて西海岸へ渡り、車を購入して、ついに仕事をゲットしました。
採用されたのはミートファクトリー(食肉工場)です。

面接で「剣心」を披露して仕事をゲットしましたが、今回はそのちょっと前の話。
前回▼

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チバギャルレストラン

ミートファクトリーで採用される10日ほど前のまだまだくすぶっていた時期。
セカンドビザ取得のためにファームジョブを探しているのですがなかなかうまくいきません。

そしてそれだけではなくシドニーで仕事を辞めてから1ヶ月弱ほぼ収入を得ていないので金銭的にも余裕が無くなってきています。
そんなある日、愛すべき私の住処であるワンダーインの住人のひとり『チバギャル』から声をかけられました。
ちゃんしん仕事決まった?
まだならうちで働かない?
料理経験者の日本人がいるっつったらオーナーが興味持ってんだけど
バンバリーにあるオーストラリア人と日本人の夫婦が経営する日本食レストランで働いているチバギャル。
本来ならセカンドビザを取得できない飲食店勤務などまったく視野に入れていなかったのですが、チバギャルのレストランは別の話。
非常に興味深い話を彼女から聞いてしまったのです。
なんとオーナーの親族が経営するファームで働いたことにできるらしく、飲食店勤務でセカンドビザを取れるとのこと。
料理なら得意ですぞ!
言っとくからね!
ちょり〜っす
あんた南半球イチ良いギャルですわ!
なんとおもわぬ方面から仕事の誘いが来たのでした。
韓国コミュニティ
面接をしてもらい即採用。
話はトントン拍子で進んでいき、気づいたら私はチバギャルレストランのキッチンに立っていました。
よろしくお願いします!
今日からよろしくおなしゃす!
ドキドキしながら仕事初日。
お店のメンバーに挨拶をします。
コソコソ
コソコソ
ちゃんということ聞けよ?
すっごいえらそう!
この店のキッチンスタッフ5〜6名は私以外全員韓国人で、完全なる韓国コミュニティ。
壁に貼ってある注意書きやホワイトボードの仕込みの段取りのメモなどもすべて韓国語で書かれています。
なんとこの店は日本食風のものを韓国人だけで作っている偽ジャパレスだったのです!
フィリピンでの韓国人との思い出

カナダで韓国人シェフと働いた記憶

よみがえります!
あの時の嫌だったことがよみがえりまくり!
しかしパースで知り合ったショーヘイや私の住処であるワンダーインの住人カズユキなど、優しくて紳士的でサイコーな韓国人も多くいるので、韓国人というだけで拒絶するのは間違っています。
しかしこの店にいた人たちは唯一の日本人である私に異常にライバル心を抱く者ばかりで、ひとことでいうと性格が悪い人間ばかりだったのです。
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エビの天ぷら事件
エビの天ぷらを揚げてみろ
急げよ?
お前に付き合っている時間はない
エビはどこでしょうか…
バタンッ!!
(冷蔵庫を激しく閉める音)
日本ではゆっくりやっててもいいかもしれないけど、ここは甘くないからな!
なんやそれ!
性格悪うぅ!
投げつけられたのは殻をむいただけの状態のエビ1尾。
天ぷら用に真っ直ぐに伸ばしてあるエビありますか?
ないなら切れ目を入れてもいいですか?

経験者だって聞いてて期待してたんだけどな
みんなそれでやってるから
早くやれ!
何を言っても高圧的な態度で意味不明なことばかり言われるので、言われるがまま未処理のエビで天ぷらを揚げます。
もちろん出来上がったのはクリンッとなったエビの形そのままの天ぷらです。

クスクスニダ
クスクス
韓国人全員で集合して私が揚げたブサイクな天ぷらを囲みチラチラこっちを見ながらニヤニヤ笑っています。
そしてシェフが口を開きました。
お前は口ばっかりでほぼ素人だ
いいかよく見とけ
はいニダ!
従業員のひとりがこれ見よがしにオーバーアクションでエビ天を作りはじめました。
ボウルを激しく置いたり、天ぷら粉を撒き散らして作業場を汚したりと、日本では怒られるような激しい動き。
そして出来上がったのは普通のエビ天。
そりゃそうです。
彼は私が使ったエビではなく、天ぷら用に仕込まれた切れ目を入れた真っ直ぐのエビを別の冷蔵庫から取り出して使用しているからです。
そして私が揚げたブサイク天ぷらと彼のものを皿に並べて私に見せて来ました。

あいつは料理経験たったの2ヶ月だ
これが韓国人の実力だ
お前は何年も料理をやってきたらしいが俺らの技術には到底及ばない
ククク
期待してたけどやっぱ日本人はダメだな
韓国人じゃないと
めっちゃムカつく!
死ぬほどムカつく!
エビの切れ目入れていいか確認したじゃないですか?
ほんとは知ってます!
やり方知ってます!
などと言おうとしましたが、これ以上何を言ってもダメだと思い黙り込んでしまった私。
チバギャルレストランでの仕事初日、気分最悪で仕事をスタートする私でした。
完全韓国Dreamer
こんなところ辞めてやる!
と思いながらも、せっかくチバギャルに紹介してもらった場所なのでとりあえず続けることにしました。
チバギャルはホールスタッフのため、シフトがかぶっていてもキッチンにいる私とはほぼ接点が無く、営業中に話すことはまずありません。
顔を合わせるのほぼは韓国軍団のみです。
次の日も韓国人軍団は嫌がらせに近い性格の悪過ぎるアクションを企てるのです。
何がムカつくのかと言いますと、必ず『Japan』という国名をつけて私を罵ってくること。
愛国心などサラサラ無い私ですが、ここまで日本人がどうのこうの言われると『戦争でもしてんのか?』と思ってしまいます。
お前がいい例だ
何年やっても天ぷらひとつ揚げられない
米の炊き方も知らない
まず歴史を学べ
日本人は韓国人には勝てない
ラーメンも韓国人が日本に持ち込んだんだ
カレーとライスを組み合わせたのは韓…
寝言言ってんじゃねぇぞ!!!!
私は別に国を上げて何か勝負をしに来たわけではありません!
単純にバイトをしに来ているのです!
夢で見たような韓国起源話を真剣にして来る「完全韓国ドリーマー」に私はイライラMAXです!
彼の腹立つ顔面に衣をつけてカラッと揚げてやりたいところですが大人の私、グッと堪えます。
しかし一矢報いたいのは変わりません。
彼らのあの伸びきった鼻をポキッと折るどころか引きちぎるくらいのことをやり、自信喪失させてやろう作戦を思いつきました。
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日本人の本気の努力を見よ!
私はこれまで数多くの飲食店で働いてきましたが、まずこれだけは言えます。
この人生で一番真剣に努力して、一番集中して働いた職場はこのチバギャルレストランです。
それは何故かというと、この店を辞めるまでに一矢報いたいという気持ちから。
彼ら韓国人軍団の自信を喪失させるためです。
まず私はこの店が基本的にそんなに忙しくなく、暇な時はキッチンメンバーは外に出てタバコを吸ったりスマホゲームをしたりしているところに目をつけました。
まあ日本人に任せられる仕事はないからな
ではまず私は何をしたのかというと、その時間にこれまで教えられたオペレーション(手順)や出来るだけ多くのレシピをメモにとり頭に叩き込みます。
帰宅してからも殴り書きのメモをすべて清書し、イメトレを繰り返しました。
また毎回探さなくて良いように皿や調理器具の場所を記憶。
汚れやすい場所や調理オペレーションの中での改善点を自分なりに考え、勤務中にこっそりと実践と改善を繰り返し、彼らには秘密で効率とスピード命のオペレーションを作りました。
帰宅後はそれらをまとめてノートを見ながらイメトレを繰り返します。
私は初日からガス台のポジションを任されますが、2日目には完全に記憶しました。
そして時間を見つけては寿司のポジション(シェフの持ち場)へ行き
盛り付けオシャレっすね〜!
写真撮っていいっすか⁉︎
日本人に俺のセンスが伝わるかな?
などと媚びを売りながら彼の盛り付けを全メニューiPhoneで撮影しました。
そして帰宅後実際に近いもの作ってみて盛り付けの癖などを記憶します。
仕事中の隙間の時間や帰宅後、また休みの日もほぼすべて店の勉強に費やすのです。

そして…
これとアレを早くやれ!
えーっと…
えーっと…!
手伝いましょうか?
皿置いときます
ぐぬぬ…
この感じです!
この感じで実力差を見せつける作戦だったのです!
またシェフのポジションは寿司の場所で、見るに耐えないほど手が遅いのでよく手伝いにかり出されていました。
盛り付けはこんな感じですね?
最後にごまふってこのタレをオシャレにシャッシャッて感じですよね?
やっときます
…なんで知ってんの⁉︎
あっこれもやっときますね
ここまでで5日です。
もうすでに私に文句を言ってくる人間はいなくなりました。
実際にギャフンと言っていたかどうかは不明です。
これで彼らの自信を喪失させたかどうかは分かりませんが、私の気は晴れました。
そもそも暇さえあればタバコを吸いに行き、「だるい」「疲れた」「寝てない」「忙しい」と下を向くやつらと私とではタフさが違うのです。
高級ホテルや料亭で働いたり、専門分野でのちゃんとした料理の教育を受けたことはないので私が「料理人」かどうかは怪しいところ。
しかし日本の街にある忙しい店、死ぬほど厳しい環境、そういった場所で自分の命を繋げるために歯を食いしばって努力してきたので「キッチンスタッフ」としての在り方みたいなものは心得ていたつもりです。
彼らのような小手先の知識と嫌がらせてマウントを取ってくる人間にやられるメンタルではない。
働きはじめて1週間。
なんと私はミートファクトリーの面接で合格しました。

採用されたその日の夕方はチバギャルレストランで仕事です。
一瞬掛け持ちも考えましたが、店を辞めるまでがシナリオであったため仕事後オーナーのもとへ話をしに行きました。
毎日頑張ってるな!
料理が出てくるのも早くなったし、ほかのやつらも褒めてるぞ
ですが…
私は韓国人達から受けたひどいことをすべて話し、辞めることを伝えました。
そしてその日を最後にレストランには行かなくなったのです。
私ミートファクトリーで仕事が決まったからレストラン辞めたよ
せっかく紹介してくれたのにごめんね
なんかすごい頑張ってたけど
まあミートファクトリーのほうがいいんじゃない?
気にしないで
あまりにも腹が立ったのでこのような形で店を辞めることになってしまいましたが、彼ら韓国軍団をギャフンと言わせられただけでも後悔はしていません。
後日チバギャルに呼び出されてオーナーから預かってきたという私の1週間分の給料を受け取りました。
こんだけ⁉︎
その仕返しじゃない?
仕事とはプライドのぶつけ合いの場ではなく、お金を稼ぐことである…。
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