タトゥーの修行でインドのゴア州、アンジュナビーチに滞在しています。
日本人女彫師のホリコさんに実際に自分の体に彫ってもらいながらプロの技術を学びました。
また、夜は現地民の希望者に無料でタトゥーを彫っています。
そして2週間が経ち、再びホリコさんのスタジオへ足を運びました。
前回▼
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CONTENTS
色ぬり
彫り師によってそのやり方は様々ですが、基本には
ライン彫り
▼
色ぬり&ぼかし
の順番で日を分けて彫り進めていきます。
拳大くらいの小さなデザインの場合は1日のうちに完成させてしまうことがほとんどですが、今回の私の場合は前腕に隙間無くぐるっと一周A4サイズくらいの大きさなので、2回に分けました。
前回はラインだけ彫ってもらったので、2週間ほどが経って前回の傷が癒えた今回は色を塗ってもらいます。
ブィィィィィィィィ……
まあラインよりは幾分かマシでしょ
タトゥーでラインを彫っていく針はライナーと呼ばれていて、複数の極細の針が集合して1本の針になっています。
「7ライナー」だと7本の針が集まっている事になります。
チカラが1点に集中し、均等の太さではっきりと色を残していかなければならないので、基本的には皮膚の深い所まで針が入っていきます。
グサグサ刺さってるぅ〜!
今回はシェーダーという針を使って広範囲に色を塗っていきます。
マグナムとも呼ばれているその針は、同じ7本でも1点に集まるライナーとは違い2列に並行に配列されているのでチカラが分散されて浅く広く、そして速く広範囲にインクを入れていくことができます。
これはこれで痛い!
休憩をはさみながらついに私の腕のタトゥーは完成したのでした。
お疲れさん!
超勉強になりました
そして同時にホリコさんにタトゥーを直接教えてもらうことはこれで終了したのです。
じゃあ来週あたり天気が良かったらビールでも飲もうか
今日これからでも良いですけども
彫ったばっかりだから、血行が良くなって傷口からドバドバ血が噴き出てくるかもよ♡
なかなか大きな仕事を終えた我々は、後日打ち上げと称して飲みに行くことになりました。
ボイン
[1週間後]
雨季のアンジュナですがこの日は朝から雲ひとつない快晴です。
iPhoneの天気予報も1日中晴れということで、ホリコさんのタトゥースタジオへ行き飲みに誘ってみます。
[17:00]
今日はいい天気ですよ!
今日だよね⁉︎
今日しかないよね⁉︎
片付けるからちょっと待っててね〜!
ビール♪ビール♪
キンキンのやつ〜♪
いまだに年齢不詳ではありますが、いつも無邪気で子供のような性格のホリコさん。
30歳を過ぎてからタトゥーを始めたと言っていたので、29歳の私より歳上だということは間違いありませんが、それにしても天気が良いだけではしゃぎすぎであります。
ちゃんとつかまってなよ?
ホリコさんの謎のメーカーのバイクの後ろに乗せてもらい、若干ぎこちない運転でビーチへ向かいました。
本当のルールはよく知りませんが、アンジュナではバイクに乗る時に誰もヘルメットをしていないため気分爽快であります。
Yeahhhhhhhh!
ボコボコの段差をそのままクリアするタイプの人だ!
シンが女連れてる!
いや!連れられてる!
私がよく行く「サントシュのバー」をバイクで通り過ぎ、アンジュナビーチ南部のバーやレストランが多いエリアに到着。
バイクを止めてビーチを一望出来る見晴らしのいい広いバーに入りました。
まだ夕方だし、そもそも雨季だという事で客は2〜3組しかいません。
我々はバーの爆音スピーカーから一番離れた店内奥の方、目の前に海が見える席に通してもらいました。
こんなの久しぶりだよ
いつもはカビ臭い部屋で猫と一緒に静かに飲んでるからさ
あははは
我々はキングフィッシャーの大瓶をひとり1本ずつ注文しました。
最初はグラスに注いで飲んでいましたが、2本目を頼む頃には面倒くさくなって直接ラッパ飲みであります。
これまで毎日タトゥーの話しかしていなかった我々はほとんどお互いのことを知らなかったので、改めて自分達のことやこれまでのことを語り合い大いに盛り上がりました。
すっごい若い!
あのう…ホリコさんっていったい何歳なんですか?
…言うわけないじゃん
…永遠の28だよ
け…計算が合わない!
3本目を注文する頃には2人とも酔い始め、また同時に日が暮れはじめます。
西日をダイレクトに浴びるその席は目を開けていられないほど眩しかったのですが、心地よい波の音が聞こえるし、蒸し暑い店内と違って風が直接当たるのでそのまま移動せず居座ることにしました。
あっちぃな…
いつもダボっとしているゴワゴワのシャツを着ているホリコさんですが、夕日の影響と、お酒が回ってきて暑いのか上着を脱ぎはじめました。
やっぱりこの人すっごいボイン!
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コイバナ
ホリコさんという人は無邪気で元気であっけらかんとした子供のような大人の女性です。
また元美大生だったことも関係しているのか喋り方やリアクションがちょっと変わっていて、いい意味で女性らしさをあまり感じない、なんとなく芸術家っぽい不思議な雰囲気の持ち主。
伊藤若冲が描く動物がたまんないだとか、ラッセンは好きじゃないだとか、よくアートについて語っていて無知の私はいつもポカンとしていました。
そんな彼女ですが、酔ってくるといわゆる「コイバナ」というものを仕掛けてくる意外にも普通の人間でした。
バンコクで知り合って、そのままオーストラリアで一緒に住んでましたけど…
いろいろあってダメでした
▼彼女ができた話と別れた話▼
別れたあとの「次」を考えた時にタトゥーがやりたいと思ったんですよ
ひとりになった事が今ここにいるきっかけになったので…まあ結果的に良かった…のかな?
分かんねぇです
違う形でタトゥーを学んでいたと思います
いや!そんなこと言ってたらすぐにフラれてますね!
ぬはははは!
どっちにしろ別れていたのかも知れませんね
キミはやっぱり男の子だな!
年齢非公開のホリコさんですが、確実に私よりは歳上です。
彼女が言うその「羨ましい」は、ほとんどの人が歳上の人からよく言われている「若くて羨ましい」とは違いました。
勉強、仕事、遊び、恋愛みたいなね
人それぞれなんだろうけど、男の子はそこに優先順位が無くて、どれも別の場所にあるでしょ?
だからキミは恋をしてもやりたい事をやれるんだよ
それが一番になっちゃうんだよ
それを人生にしちゃうんだ
でもね、人を好きになるとそんなの全部無くなったっていいからその人と一緒にいたいと思っちゃうんだ
だから全部やめて、全部捨てて、全部を変えて結婚したんだよ
(女心は難しいなぁ)
ホリコさんは「一夫多妻制ムスリム系のインド人」と結婚して、一度絵を描くことをやめています。
しかしイスラム教の特殊な様式の生活と他の奥さん軍団の嫌がらせや暴力により、たまらず逃げてきたのがここインド唯一のキリスト教圏ゴアだったのです。
イスラムの彼と結婚したことが間違ってたとか思ったことないし、今でも彼のことを世界一愛してる
でも「一夫多妻制の生活」や「そこにあるのかどうかも分からない愛」なんて私たち日本人になんか到底理解できないことなんだよ
それって哺乳類の繁殖投資とヒトの配偶行動にすごくストレートで、そこに美しさは感じなかったんだ、私はね
宗教の決まり事とか言葉の壁とか、そんなものは「愛」があればなんてことないさ
でも…
でもさ…
そこまで言いかけて、3本目か4本目のビールをゴクゴクと飲み干し黙るホリコさん。
[19:00]
アラビア海からまっすぐに伸びる突き刺すような夕日が、少しだけ涙を浮かべるホリコさんを照らします。
その姿は言葉を失うほど美しく、そして切なすぎる話を聞いた私は黙ってホリコさんを見ることしかできませんでした。
こんな40のババアが熱くなっちゃったよ
気にしないでね
私は今人生すごく楽しんでんだからほんと気にしないで!
猫飼ってるし!
28!28!
永遠のやつ!
永遠の28!
私の師匠はとても可愛い人でした。
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執筆中
おしんぽこさんにタトゥー入れてもらいたいです。