カナダのトロントでワーホリ中のこの私。
18日間の長期休暇をもらって14泊15日のニューヨーク旅行に行ってきました。
大きなトラブルなどは無く、無事にトロント戻り一安心です。
そして連休最終日はトロントの中華ハウス(自宅)でゆっくりして次の日から仕事に復帰します。
ということで私の職場であり数少ない友人がいる店『Soul』に出勤したのですが…。
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シェフのケン、居なくなる
私がトロントで働いているアメリカンバーは死ぬほど忙しい店です。
どれだけ忙しいかというと『キッチンのボスであるシェフが失踪するほどつらい労働環境』だったのです。
私は9月1日から18日間という長期休暇をもらいニューヨーク旅行に行っていました。
そして9月19日に仕事に戻ったのですが、その数日後シェフが失踪してしまったのです。
マジやべー!
ハンパねぇ!
いつも落ち着いているオーナーが私の所に駆け寄ってきました。
マジしゃれにならんぞ!
Kenとは我々が働く店のシェフ、いわばキッチンマネージャーでありオーナーの親友でもあります。
Kenは料理人に多い典型的なアルコール中毒者で、数回飲酒運転で事故を起こしていたためオーナーから強制的に店の2階に住まわされていたのです。
その日いつも通り14:30に出勤した私とでんじろうですが、Kenはまだ来ていませんでした。
と思っていたらじつは荷物ごと綺麗に居なくなってしまっていたらしいのです。
心配だ…パソコンとか置きっ放しだけど良いのかな…
どこまでも人が良いオーナーです。
思い当たる節がちらほら
おしんぽこの仕事復帰に大喜び
私はニューヨークからトロントに帰って来てすぐに仕事に復帰したのですが、Kenは目を丸くして驚いた後随分と喜んでいました。
それはもう気持ち悪いくらいに。
20回握手をして、30回ハグがありました。
そして40回「Welcome back!!」と言われたのです。
私は持ち前のタフさと、クビになるわけにはいかない(貧乏なので)という強い信念から常に120%の力で働きまくっていたため、店の中でも大きな存在であったと思います。
そんな主力であった私が戻ってきたということは、Kenとしては
と思ったのでしょう。
いきなりいろいろと教え始めた
復帰した初日からいきなり様子が変わります。
そして休みを上手くまわしたいんだよ
それまで必要最低限のこと以外はまったくせず、仕事の効率化や生産性を意識したような改革を行わなかったこの男が、珍しく何かを提案し行動に移そうとしていることに私は少し驚きました。
確かに私がニューヨークに行っている間、でんじろうやその他のスタッフが大きく成長していたことに気付きました。
特に
が口ぐせのあついさんの動きが格段に良くなっていて、私がいなくてもまわるというのは本当のようです。
【旅行記88】で書きましたが、一時期は全員で3人のときがあったので、誰か1人でも欠けるとダメでした。
ということで私はそれまでKenがやっていたことすべてを2日ほどで叩き込まれ、ついにKen抜きでも店がまわるようになってしまいました。
そして彼が失踪した日にすべてが計算通りだったことに気付いたのです。
スカイスキャナー見過ぎ
Skyscanner-スカイスキャナーとは航空券を世界中の航空会社や代理店から一斉に検索できるサービスで、バックパッカーのこの私もご用達であります。
これは私がニューヨークに行く前からのことですが、『Kenがそのスカイスキャナーをことあるごとにスマホで見ていた』のを私は見逃しませんでした。
さすがに日付まで見ることはできませんでしたが、Kenがスカイスキャナーを開いていることに気付いたときは毎回『トロント→〇〇』を検索していたのです。
べ、べ、べ、別に⁉︎
と言ってすぐにスマホをポケットに入れるあたりがとっても怪しいなと思っていましたが、まさか何も言わずいきなりいなくなるとは思いませんでした。
夢を語り出す
当時私は27歳、Kenは私の1つ上で28歳です。
つまり『まだ他の国でもワーホリができる年齢』です。
Kenは前からオーストラリアに行きたいことをしょっちゅうほのめかしていたのでした。
しかし彼は10代のときから10年以上トロントに住んでいて、これから違う国に移り住むとは思えなかったのです。
ある日Kenが夢を語り出しました。
場所はトロントで?
違う日
10年以上住んでるし
違う街に住んでみたいよ
バンクーバーとかモントリオールもいいよね
また違う日
トロントみたいな大都市はデカすぎて俺には合わない
いつかは大自然の中で暮らしたいな
カナダは自然が多いからね
この街に住みたいとかあるの?
バンフとか?
シドニーは大自然ではありません。大都会です。
失踪したあと、彼がシドニーに行ったかどうかは不明ですが、カナダから出て行ったのは間違いありません。
また「世界中を旅してまわりたい」だとか、ちょっと体が悪いときに「この病気は一生治らないから店を辞めたい」だとかの発言が多く見られ、他にも思い当たる節がちらほらあったのです。
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後任が見つかるまでおしんぽこが料理長
Kenはいなくなりましたが、問題はお店です。
サボリ癖のある使えない男でしたが、いないとなるとそれはそれで大問題なのです。
何故なら『Kenしか知らないソースのレシピ』や『Kenしか知らない物の場所』など、彼のワンマンプレイの部分までは私は教えられていませんでした。
オーナー様!
やべーです!
これからどうするんですか?
シン!かわりに頼む!
なんとワーホリで期限付きのこの私にシェフのかわりを頼まれてしまったのです。
給料上げるから
頼むよ
この店の給料形態はとってもシンプル。
日給$130+チップです。
それは早く来ても遅刻しても、早く終わっても遅く終わっても一切変わらず$130。
ニューヨークでお金を使い過ぎて少々後悔していた私は金に目がくらみました。
ということで、新しいシェフが決まるまで私がキッチンの『長』になってしまったのでした。
キッチンをガラリと変えた話
面接をするようになる
もともとTim Hortonなど(カナダのカフェチェーン)で勝手に面接をやっていましたが、それからというもの店で面接を行うようになりました。
臨時料理長とは言え私は『ワーホリ』なので期限付きです。
と言うオーナーのリクエストにより、厳選してより強いチームを作っていったのです。
仕込みのオペレーション変更
[キッチンの図]
営業中に仕込みができない作りのキッチンなので、開店3時間半前に出勤してその日の仕込みをすべて終わらせるというシステムでしたが、そのせいで毎日12時間以上立ちっぱなしだったのです。
給料変わんないから
という厳しそうでゆるゆるなオーナーの方針を鵜呑みにした私は、営業中にも仕込みができるように考えました。
冷蔵庫の配置を変え、棚を増やし、それまでキッチン内にあった無駄なアイテムを排除して、少しだけ仕込みができるスペースを作ることに成功したのです。
それまでは仕込みをするなら地下の仕込みスペースまで行かなければならず、オーダーが入り続けるキッチンとは完全に隔離された場所なので、営業中にキッチンを離れることは不可能でした。
しかしスペースを作ることによって物を持ち込むことができるようになり、営業中の隙間時間にガンガン仕込めるようになったのです。
そしてそれによりこれまでの『14:30出勤』を1~2時間遅らせることができるようになりました。
早番と遅番
この店の1番の問題は紛れもなく拘束時間。
仕込みのオペーレーションを変えたとはいえまだまだしんどいことには変わりありません。
スタッフは疲れ切っているし、新しく入った人はすぐ辞めちゃいます。
ということでオーナーと人件費について話し合い『シンプルに半分の給料でいいから勤務時間も半分』というシフトを作ってしまいました。
後任探し
もともといたシェフのKenは自分で色々と抱え込む癖があり「手伝おうか?」と言っても
と、あたかも物凄い技術力を要する作業をやっているかのように、頑なに自分の仕事を他のスタッフに教えることはありませんでした。
しかしKenがいなくなったあと、それまで彼がやっていたことを誰かがやらなければいけないので私がやることになったのですが…。
私は知りませんでした。
Kenがひとりでやっていた仕事はとても簡単で誰でもすぐにできるものだったのです。
ということで、それ以降に入って来た新人には最初から料理長業務を教え『私の後任』を育てていきました。
12月にビザが切れるので私は大急ぎで育成を続け、とうとう私が出勤しなくても店がまわるようになったとき、大きな達成感を感じました。
まるまる1年のビザを残している『将来は自分の飲食店をやりたい』というイケメン・ヒロくんが今後の『料理長』です。
そしてついに!
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