前回の続きです。
バンバリーにあるワンダーインという宿で起きた話。
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前回▼
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プレイボーイ
- [デンマーク人スネオ]
黙る渦中の男
カズユキとスネオがイナヤンを取り合って始まった争いは、まわりを巻き込んだ大事態になってしまいました。
次の日には宿内で一気にその噂が広まり、カズユキを危険人物とみなす風潮が広がってしまいました。
カズユキは朝から姿を消していて話すことも出来ません。
スネオとイナヤンは何事もなかったかのような顔をしています。
ただ変化があったとすれば、前日まであれだけ熱心にイナヤンに接近していたスネオがなぜか一方的に彼女を避けています。
正直私や事情を知るまわりの人間はあまり首を突っ込みたくはないところですが、問題が起こるきっかけとなったスネオの様子がおかしいとこちらも不思議に思うほかないのです。
と思いましたが、うっすら感じたスネオの避けてる感じは意外なことが原因でした。
不審者リンリン
そしてその次の日。
この日は日曜日で私としては月曜日からまた地獄の労働が始まるのであまり羽目を外さず宿でおとなしくしておきたいところ。
キッチンでひとりで食事をしていると、知らぬ間に見かけない女の子が真横に座っていました。
- [台湾人リンリン]
(お化粧すっごいね…)
あれ?今日チェックインした人ですか?
ジロジロ
違うか…アジア顔だもん
ねぇスネオって人知らない?
スネオのお部屋どこか知ってる⁉︎
どちら様でしょうか?
スネオの彼女なの!
スネオの顔も知らないのに彼女?
不審者が過ぎるぞ!
しかしなぜかスネオのことを良く知る彼女はこの日スネオと会う約束していたらしく、嘘でもないようなのでスネオの部屋に連れて行くことにしました。
コンコン
ガチャ…
スネオのルームメイトの石川ちゃんが出てきました。
スネオいる?
とその時!
ドアを開けるや否やリンリンは寝ているスネオを確認し、そのまま彼の上に飛び乗ったのです!
そして…!
ぶちゅぶちゅ♡

キミは…リンリン?
ぶちゅぶちゅ!
リンリンの奇行に言葉を失う私と石川ちゃん。
彼女のぶちゅぶちゅで目を覚ましたスネオに軽く説明してもらい状況を理解しました。
日本のアニメ・アイドルオタクであるスネオはもともと日本人や台湾人などのアジア人女子が大好物です。
リンリンとはネット上で知り合い、なんとネット上でのコミュニケーションだけで既に交際を開始していたらしく、この日にバンバリーのワンダーインで会う約束をしていたのです。
台湾からパースに飛んできてそのままバスでバンバリーまで移動。
そしてやっとのことでスネオに会えたのだから、リンリンはさぞ嬉しいのでしょう。
しかしその1週間前にイナヤンというこれまたスネオ的にストライクな女が現れてしまったがために、リンリンと会う約束をしていた「この日までに」スネオはイナヤンに手を出したかったのではないかと我々は推測しました。
スネオよ!
なんというプレイボーイぶりだ!
なんでこの宿の人はみんなこうなの⁉︎
ぷんぷん!
石川ちゃんの部屋では以前もこのような淫らな行為が行われたため、大変怒っておられます。

イナヤンvsリンリン
- [イナヤン]
スネオの一時的な性欲によりとばっちりを受けた者が私を含め何人もいますが、一番可哀想なのはイナヤンです。
(今は行かないほうが良いのではないでしょうか⁉︎)
行かずともキッチンの窓からテラスを見ると…。
イナヤンが宿にいるのを知っているくせにスネオは隠そうともせず公衆の面前でリンリンといちゃついています。
ねぇシン!あのケバい女は誰!?
隠してもしょうがないと思い、私はイナヤンにリンリンがスネオの彼女であることを伝えます。
へ〜…

一瞬イナヤンの顔がマジのヤンキー「マジヤン」に変わったのを私は見逃しませんでした!
そして案の定女同士の争いが始まってしまったのです!
這樣骯髒的面孔!
我可以將手指伸入井
底並弄斷後牙嗎!?
香煙味!
遠離他!
醜陋的鄉村女人!
同じ台湾人なので台湾語でめっちゃケンカしています!
何をおっしゃっているのかはサッパリ分かりませんが、原因がスネオであることは間違いありません。
イナヤンのヤンキー感もさることながら、リンリンのぶっ壊れたメンヘラ感も負けていません。
お前は参ったなぁみたいな顔してんじゃねぇよ!
それ以降イナヤンとスネオが一緒にいることはなくなりました。
カズユキにいたっては人が変わってしまったかのようにもはや誰とも話さなくなってしまいました。
ちょっと前までみんなが仲良くしていたのに気付けばもうバラバラです。
リンリンの登場でこの戦争は終幕かと思いましたが、また別の場所では違う種類の争いが勃発していました。
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イアンvsイタリア軍
- [イアン]
カズユキがビリヤードのキューをへし折ったりロッカーをベコベコに凹ませたりと暴れまわってしまったため、ビリヤード場は一時的に閉鎖されてしまいました。
それに腹を立てたイタリア人軍団が宿側に抗議をはじめたのです。
- [イタリア軍団]
何故ならほぼ毎日プレイするほどビリヤードをやりたかったから。
ここはしばらく閉鎖だよ
彼はワンダーインのオーナーであるオーストラリア人のイアンです。
この宿にはお酒を飲んでうるさくする人もいるし、風呂に入らず部屋が臭すぎる人もいます。
また使った皿を洗わないだとか、ドミトリールームで平気でセックスをしたりだとか、ドラッグを敷地内でキメたりなど、この宿はもうめちゃくちゃです。
そしてそれらすべてを黙認してきたイアンが今回の件でついに動いたのです。
原因がコリアンボーイだとしても関係ないね
韓国人はクソ民族だ!
感情的で暴力的な韓国人が俺は大嫌いだ!
ビール瓶を割ったのは誰だ?
掃除をしたのはうちのスタッフだが
▼こいつ
出て行け
この宿でいつも問題を起こしたり文句ばっかり言ってんのはお前たちイタリア人ばっかりだ
もちろんあのコリアンボーイもキックアウト(強制退去)
ここは差別無く全人種を受け入れる宿だが、お前たちのような人を人種や国籍で一括りにして批判している人間がいると迷惑なんだよ
ビリヤード台はお前たち全員がチェックアウトしたら復活だ
靴の履き方も知らないオーストラリアの猿が!
偉そうなこと言ってんじゃねぇぞ!
※オーストラリア人は何故か素足で外に出る
みんなこんな宿出て行こうぜ
なぜみなさん国名を出して罵り合うのでしょうか。
私は海外生活を経て気付いたことがあります。
もちろん私はいくつかの言語しか知らないのですが、一発で自分が怒っていると伝えることができて、一発で相手をブチギレさせる『FUCK YOU』に値する言葉が日本語には無いのです。
そのため日本人の喧嘩シーンなどでは
この〇〇が!
お前みたいな〇〇は〇〇だ!
とその相手に合った的確な悪口を発して、相手が嫌な気持ちになる攻撃を仕掛けます。
しかし海外で何回か口論を見たことがありますが、とにかく同じことばっかり言っているのです。
人の悪いところを言わず『FUCK YOU』などのひとことネタのみで相手に怒りを伝える。

なぜそうなのか?を考えると
『何を言えば相手が傷つくかわからない(思いつかない)』
『デブとかブスとかそんなことを言っても効かない(自分がまるで気にしてないから)』
このふたつが理由だということが分かりました。
つまりそれでも怒りに任せて何かを言いたい時は、相手の個人では変えることの出来ない普遍的な依存先を悪く言うしかないのです。
だからこそ真っ先に国籍や人種で罵倒するのだと私は思いました。
終戦
スネオとリンリン
彼らはついこの間が初対面とは思えない程に毎日ベタベタイチャイチャしています。
スネオはリンリンがバンバリーに到着し次第ミートファクトリーの仕事を辞めてファームジョブを探しに行く予定だったようで、車を買ったりと着々と準備を進めています。
彼と私は仕事も同じだし、出かける時もだいたい一緒だったのでお別れするのは寂しいものです。
セカンドが取れたらどこかで会おう
2nd Working Holiday Visa
通称セカンドビザ。
オーストラリアのワーホリにのみ適用されるシステムで、政府指定の農場や工場で88日以上働くともらえる2年目のワーホリビザのこと。
ベンジャミンとイタリア軍団
ビリヤードができなくなってオーナーと揉めた彼らの他数名はこの事件をきっかけにワンダーインを出て行ってしまいました。
またベンジャミンもバンバリーに仕事がないからと結局出ていってしまいました。
彼らがいなくなって一気に静かになったワンダーイン。
これはこれで良いのですがやっぱり夏場の活気が恋しいものです。
カズユキとイナヤン
カズユキは今家賃を払っているぶんが終わると強制退去になるそうです。
私のバンバリー生活が始まってからずっと仲良くしていた彼が去るのは非常に寂しいことです。
しかしリンリンが現れたあたりからカズユキとイナヤンは再び急接近し、結局すぐに付き合いはじめました。
それと同時にカズユキの荒れた心も元のように穏やかになりとりあえず一安心です。
ワンダーインを出たあとに住むシェアハウスを見つけたらしく、今後はその家にイナヤンと一緒に住むとのこと。
許してくれ
なんでベンジャミンとケンカしたのかもよく覚えてないんだ
何はともあれ解決したのなら良かったのですが、私としてはカズユキが韓国人の誰よりも感情的で誰よりもそれを押し殺して普段の生活を送っていたということ知り複雑な気持ちです。
イナヤンには繊細なカズユキのハートを癒してあげて欲しいものです。
今回のことで差別、歴史、戦争の話は飲み会ではご法度だということに気付かされました。
加えるなら宗教の話もかなり危険です。
人が人を罵る時には「その人自身ではなくその人のバックグラウンド(国籍人種お家柄宗教)を否定する」という習性がある。
これはつまり自分もそれを言われたくないということを意味します。
しかし我々(私だけかも知れませんが)日本人はあまりそんなことはないはずです。
この国民性はかなり珍しく、ひょっとしたらここまで余裕のある民族は日本人だけかもしれません。
また逆に愛国心の薄さもあるとは思いますが、私が思う日本人とはその両者を兼ね備えた非常に珍しい民族だと思いました。
そこに気付かずに自分の考えがあたかも正しい、人間のスタンダードであるかのようにカズユキに対して説教じみた話をしてしまった私。
ただの好き嫌いだ!
そんなコト言われたくらいで怒るなよ!

時間が経った今でも反省しています。
そして現在。
カズユキとイナヤンは結婚して台湾で仲良く飲食店を開業しています。
めでたしめでたし。
バックパッカー世界対戦終わり
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