前回からの続きです。
バンバリーにあるワンダーインという宿で起きた話。
前回▼
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あいつを止めろ
カズユキはどこ?
ワンダーインにはビリヤード台があり、無料で使えるため夜はだいたいいつもビリヤード大会が行われています。
この日は週末というだけあって大変盛り上がっていました。
ベンジャミンというドイツ人の若者がいます。
- [ベンジャミン]
ここは基本的に宿泊者全員が家族のような宿ですが、ベンジャミンもまた私やカズユキと仲が良い友達のひとり。
ミートファクトリーの奴隷のシンじゃないか!
ビリヤード勝負しようぜ
口は悪いですがとても友達思いの良いやつです。
ところでカズユキ見なかった?
まずい!
廊下に入った先にはカズユキの怒りの原因を作った男であるスネオの部屋があります!

キアラの「戦いなさい」という言葉により覚醒したカズユキがスネオの部屋まで殴り込みに行ったのではないか。
そう私の頭をよぎった瞬間、ドアを強く叩く音が聞こえてきました。
ドンドンドンドン!!
恐る恐る見に行くとやっぱりカズユキがスネオの部屋のドアをノックしています。
痩せている私よりもさらにガリガリのスネオが、筋肉モリモリレスラー体型のカズユキに対抗できるわけがありません。
ましてやここで大喧嘩をはじめてしまった場合、間違いなくカズユキはひとりで悪者になってしまいます!
どっちも私の友達です!
私が止めなければ!
しかし!
キレたカズユキがここまで恐ろしいものとは知らずこの私ビビりまくっています!
そうこうしている内にドアが開きましたが,出てきたのはスネオのルームメイト石川ちゃん。

何その顔?泣いたの?
おやすみ
何も知らないのであろう石川ちゃんはポカーンとしています。
(こっちこっち!)
コソコソ
シンちゃん何してたの?
宿にいなかったよね
石川ちゃんの話
石川ちゃんはスネオと同部屋なので
と思った私は石川ちゃんを呼び出しました。
テラスではまだまだ多くの人が飲んでいます。
空いていた椅子に座り石川ちゃんに話を聞いてみました。
今日なんかイナヤンを連れ出して夜遅くまでデートしてたみたい!
きゃーっ♡
ふたりでビーチに行ったり、暗くなったら灯台に登ったりしてたんだって!
もう〜♡きゃーだよ♡
それはだいぶマズい!
もしカズユキがそのことを知ってしまった場合、心の底から怒り狂うことでしょう。
私はカズユキが今スネオに対してブチギレていること、その原因、そしてつい先ほどまでの私との会話の内容を石川ちゃんに話しました。
今日はスネオとイナヤンがデートしてたから、カズユキはあっさり彼女のこと諦めたのかなって思ってたよ
ん?てことはさっきカズユキが部屋に来たのは…
だから止めに来たんだけど…もう恐ろしくて恐ろしくて
ていうかさイナヤンも良くないよね
最初はカズユキとくっつきそうだったのに
今はイケメンスネオでしょ?
ちなみに石川ちゃんだったらどっちがいいの?
スネオは根暗のオタクだし、カズユキは最近ギラギラオラオラしてるし…
違う種類のドキドキは今はいらん!
照れとる場合じゃない!
我に返った瞬間ついに恐れていた事態が起きてしまいました。
とばっちり
ビリヤードしようぜ
なんと部屋に戻ったと思っていたカズユキがヨーロピアンたちで盛り上がっているビリヤード場にフラっと現れたのです!
そのことに気づき遠くから観察する私と石川ちゃん。

女にでもフラれたか?
はははは!
辛いラーメンでも食って寝ろよ!
口が悪いベンジャミンはいつものように人を挑発するような喋り口ですが、これは彼の通常運転だしみんなもそれを分かっていて彼と仲良くしています。
本来であればなんの問題もありません。
しかし敏感になっているカズユキはベンジャミンのその言葉で怒りの矛先が変わってしまったのです!
ガンッ‼︎
ビリヤード場の横に設置してある貴重品用ロッカーを思いっきりパンチするカズユキ!
場は一瞬にして凍りつきます。
酔ってんのか?
人を見下してんじゃねぇぞ!
バキッ!
なんとベンジャミンやイタリア軍団が楽しくプレイしていたビリヤードを中断させて物に当たりはじめたのです。
ボキボキ!
しまいにはその怪力でキュー(玉を突っつく棒)をへし折ってしまいました。
さすがにカズユキの意味不明な態度に怒るヨーロピアン軍団。
バリンッ!
短気なイタリア軍団は空のビール瓶を地面に叩きつけてバリバリに割っています!
戦争に負けたんだ!
ガシッ‼︎

ヤバイです!
これは間違いなくヤバイ!
カズユキは怒りに任せて今回の件に関してはまったく関係のないベンジャミンの胸ぐらをつかんでいます。
しかし血気盛んな若者ベンジャミンはカズユキを罵倒しはじめたのです。
喧嘩すんのか?
おおやってやるよ?
お前らはいつもそうなんだよ!
差別はやめろ!
もはや国名を言われただけで反応してしまう韓国人カズユキ。
もともと戦争の話になると一番敏感なドイツ人ベンジャミン。
大事なビリヤードタイムを邪魔されて怒るイタリア人。
もう手がつけられません。
なんとかまわりの人間に抑え込まれて殴り合いに発展するようなことはありませんでしたが、ビリヤード場はキューが折られてしまったために解散。
溜まっていたヨーロピアンたちも散り散りにその場を去って行きました。
シンくらいしか今のカズユキは話できないだろ?
あいつを止めてくれよ!
なんか知らねぇけど暴れてんだよ!
(私とキアラがカズユキを興奮させてしまったから)
あいつは普段いい奴なのに今日は別人みたいだ
俺いまめちゃくちゃムカついてるから
もうあいつは友達じゃない
じゃあなシン
おやすみ!
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誰が悪い?
カズユキに黙って勝手な行動に出たスネオが悪いのか、男の心を掻き乱すイナヤンが悪いのか、1番気を付けるべき日本人の私がカズユキの中の敏感な部分である差別問題に触れたことが悪いのか、男なら戦えといい加減に発言したキアラが悪いのか、そもそも前々から平気で他国の文化をジョークとしていじり倒してくるヨーロピアンが悪いのか
それ以降カズユキが暴れることはなくなりましたが、今回のカズユキブチギレ事件は思わぬ場所でも争いを生んでいたのでした。
大盛のパスタをちゅるちゅる食べるキアラをキッチンで発見。
のんきに飯食っとる!
続く
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