バンバリーに住みはじめて2ヶ月が経ちました。
掛け持ちでクリーナーの仕事をしていますが働いているのは週4日。
かなりきつい仕事で体はボロボロですが毎週末3連休なので回復するには十分な日数です。
しかし…。
毎週末3連休はめっちゃ暇です!
前回▼
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ギターが欲しい
Ovation-オベーション
その昔私はロックバンドを組んでベースを弾いていたことがあります。
そしてそのもっと昔。中学3年の時にギターを買って練習していたこともあったのでギターも弾けます。
毎週金土日が休みの私は暇を持てあましていたので、久しぶりにギターでも弾きたいなと思いました。
決めたらもう我慢出来ない私はオーストラリアのコミュニティサイトGumtreeで中古のギターを購入することにしました。
普通のアコースティックギターと違って穴が無く、裏側が丸くなっている個性的なギターです。
昔所有していたことがあったのですが、コンパクトで気に入っていたのでオーストラリアで再びこのオベーションというギターを買うことにしました。
マンジュラへギターを受け取りに行く
暇そうにしていたチバギャルとどうぶつくん。
- [どうぶつくん]
- [チバギャル]
彼らを連れてドライブがてらManduja-マンジュラというパースとバンバリーの中間くらいにある町へギターを受け取りに行くことになりました。
ただ走っているだけなのに、オーストラリアの田舎でのドライブはなぜこんなにも楽しいのでしょう!
ついてきたふたりも特に目的も無いのに大盛り上がりです。
バンバリーから1時間程で到着。
売主から指定された住所へ行くとそこは綺麗なビーチの目の前にある超豪邸でした。
コーヒーでも飲む?
本格的なエスプレッソマシーンを家に置いているお洒落ハウスで我々は緊張しながらコーヒーを飲みました。
キミは弾けるのかい?
私は恥ずかしながらもビートルズの曲をちょっとだけ弾いてみました。
I 〜♪once had a girl 〜♪
or should I say〜♪
she once had me〜…
ははは
いいなぁ弾けるやつは
歌声は普通でも英語ネイティブが歌うとめちゃくちゃ上手く聴こえます。
はじめて尊敬しました!
夕日が沈むオーストラリア西海岸のビーチ。
その目の前にあるお洒落な豪邸でお洒落な人たちとコーヒーを飲みながらゆる〜くギターを弾いたり歌ったり。
売主のウェルカム精神がすごくて2時間ほどお洒落な時間を過ごさせてもらいました。
ギターのほかに替えの弦、チューナー、大量のピックももらいかなり良い買い物をしました。
私はついに暇つぶしの道具を手に入れたのでした。
謎の男・ハイデン
私が住処にしている宿ワンダーインは私のようなワーホリや旅行者のほかに地元の変な人も数人滞在しています。
ある日の夜。
宿のテラスで先日購入したギターをひとりで弾いていたところ、それまで見たことのない汚い格好をした男が棒立ちで私を見ていました。
一旦ギターを置き挨拶してみます。
ハロー
そう言い残し彼はどこかへ行ってしまいました。
物静かなその男は髪ボサボサでボロボロのデニム、そして素足。
と思いながら再びギターを触っていると、さっきの素足男がワインとマグカップを持って戻ってきました。
このワイン飲んでいいから
じゃあワインいただきます
彼の名前はハイデン。
無口で無表情ですが悪い人ではなさそうです。
マグカップになみなみに赤ワインを注いでくれたので私はギターを彼に渡します。
ははは
なにやらハイデンは嬉しそうです。
おそらく彼もビートルズが好きなのでしょう。
(ニッコリ)
彼はワインをゴクッと一口飲んだあと
「Lucy in the sky with diamonds」
というビートルズの曲をかなりゆっくりとしたスピードで弾き語りしてくれました。
しゃがれた声に鼻声ミックスで独特の声質。
そして複雑に揺れ動く原曲のメロディからまったく音程を外すことなく歌い上げる彼の上手すぎる演奏と歌に度肝を抜かれた私は驚きを隠せません。
目がチカチカするようなサイケデリックで怪しいこの曲を弾き語りする人を私は見たことがなかったのでとても新鮮な気持ちになりました。
さらに彼は左利きだそうですが、右利き用の私のギターを反対に持ち、見たこともない変な抑えかたでラクラクと弾いています!
その後も彼のすごすぎるギターテクと上手すぎる歌を見せてくれます。
気付けばまわりには10人以上の人だかり。
私はこれまで世界中のバックパッカー宿でギターを弾く人を見てきましたが、彼ほどの才能丸出し男を見たことがありません。
ノンストップで5曲ほど歌った後は拍手喝采。
彼にもらったワインを飲みながらやっとここで普通に会話をはじめました。
彼は私と同い年で誕生日も数日違いだったということが判明し、かなり仲良くなってしまったのです。
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天才ギタリスト
ハイデンはバンバリー生まれバンバリー育ちのオーストラリア人です。
実家はワンダーインのすぐ近くにあるのに、なぜこんな所に泊まっているのかと聞いてもあまり詳しくは教えてくれません。
週末の3連休が終わり月曜日。
私はまたいつものようにミートファクトリー&クリーナーの掛け持ち地獄労働の4日間がはじまります。
忙しくてハードで長〜い1日を月曜火曜とクリアしていく中、ハイデンが宿から消えたことに気付きました。
もう出て行ったのか
少し寂しい気持ちになりましたが、相変わらずボロボロになるまで働いている私はそれどころではありません。
そしてハイデンが4日前までいたことを忘れかけていた金曜日。
また退屈な3連休がはじまったのですが、消えたはずのハイデンが再びチェックインしてきました。
どおりで動物園のニオイがするはずです。
しかし私が休みだからわざわざ宿に来るなんて、どうやら私は彼にかなり気に入られているようです。
というよりはギターが弾きたくてたまらないんだろうと思いハイデンにギターを弾くかと尋ねたところ、今回は自分のギターを持ってきたとのこと。
彼は部屋から左利き用のボロボロのYAMAHAのギターを持ってきていきなり弾き始めました。
アドリブでブルースっぽいものを弾く彼の演奏に、私はギターの低い音の部分でベース風に合わせたりして遊びました。
Good!
ワーホリ中にこんな友達が出来るなんて思ってもいなかった私はハイデンとギターを弾くのが楽しくて、気付けば1日中彼とふたりで過ごしました。
そして日曜日。3連休最終日です。
ハイデンに車を出して欲しいと頼まれたので朝からふたりで出かけます。
着いた場所はバンバリーの楽器屋でした。
基本的におとなしいハイデンは車内でも楽器屋でもほぼ無言です。
ギターの弦をいくつか買ったあと、知り合いっぽい店員と少し話して何故か大きなピアノの前に立ったハイデン。
そのまさかでした。
激しいジャズみたいなものを立ったままめちゃくちゃに弾きまくる彼に私も店員も開いた口が塞がりません。
3分間ピアノを弾き続けたあと、ハイデンは満足したようで楽器屋を出て車を出します。
もうひとつ行きたい所あるんだけどいいかな?
近くだから
彼に言われるがまま着いた場所はバンバリーの住宅街でした。
なんと私はハイデンの実家に来てしまいました。
そこはプール付きの大きな家で、ハイデンは裕福な家庭の息子だったようです。
そして通された彼の部屋に行くとそこには大量の楽器とバンドセット、レコーディング環境までもが揃っていて、趣味の域を完全に越えた音楽スタジオ部屋でした。
Let’s play
彼がボソッといった「Play」は「演奏」ではなく「シン遊ぼう」と言っているように聞こえました。
天才の親父
夕方までハイデンの部屋で遊んだあと、満足したのか彼は急にソファで寝はじめました。
不安定な男だな
ほとんど喋らないし、感情の動きも見せないし、ワインと大麻だけでビーチで4日も生活しちゃうしとっても変なやつです。
おおいに尊敬しながらも少し心配になります。
ほんとの天才ってこうなんだろうなぁと思いながら彼の実家を出ました。
車に乗ろうとしたところハイデンを白髪にしたようなおっさんに話しかけられました。
さっきまでお邪魔させてもらってました
キミはミュージシャンか?
それともあいつと葉っぱ(大麻)を吸う友達?
私はただのしがない工場員で、ハイデンとは先週知り合ってたまに一緒にギターを弾く仲です
最近あいつ楽しそうなんだ
多分キミのおかげかな
ありがとう
すぐに才能を開花させたけど
同時に誰とも話せないくらい閉鎖的になっていったんだ
10代の時に精神病院の施設に入れたことがあるんだけど、その時にビートルズを知ってからもう10年以上あんな感じなんだよ
あいつの性格だとバンドを組んでも仲間がすぐいなくなっちまうんだな
結局ひとりで音楽やるか酒かドラッグか…だな
ははは
って名前でやってるらしい
最近じゃ流行らなそうな古臭いロックだよ
ジジイの俺はあいつの曲好きだけどな
ははは
前はパースでたまにライブをしてたんだけどなぁ
初対面時の会話
(ニッコリ)
特に音楽的才能もない私がなぜここまでハイデンに気に入られたのか、ハイデンパパと話して分かりました。
人の心を動かし続けるジョンレノンは偉大だなとつくづく思った次第です。
絶対返ってこないから貸すなよ!
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シャイボーイ
それからというもの平日であってもハイデンはワンダーインにいるようになりました。
私以外にも少しずつ宿のメンバーと仲良くなったようです。
特にワンダーインの日本人女子メンバーと仲良くなった彼は毎日とても楽しそうにしています。
▼日本人ガールズ
▼彼女たちを喜ばそうと頑張るハイデン
日本人ガールズからも大人気。
息子を心配するハイデンパパにも彼の笑顔を見せてあげたいものです。
そんなある日いつものようにギターを持って私の所へやってくるハイデン。
何やら言いたそうですが、相変わらず無口なので黙ったままギターをポロポロ弾くだけです。
そしてもじもじしながら口を開きました。
ん〜…
あのさ…
…何でもない
「Two of us」というLet it beのアルバムの曲をふたりでハモりたいから歌詞を覚えてこいと言われていたので、そのことかなと思いました。
低い方で練習したから、ハイデンは高い方でよろしく
Two of…
メタルちゃんと石川ちゃんは…
ボーイフレンドいる?
ただの質問な!ただの質問!
ただ質問しただけ!
どおりで最近は私がいなくても宿にいるわけです。
ジャパニーズガールは美しい
恥ずかしがる可愛いハイデンですが、どっちもは欲張りが過ぎます。
ハイデンパパが最近楽しそうだと言っていたのは彼女たちの存在も大きいようです。
頼む
自分で言って
ハイデンがこんなに恥ずかしがり屋だったとは..。
その数週間後、ハイデンはまたフラっといなくなってしまいました。
SNSはおろか電話すら持っていないので誰も彼の行く末を知りません。
いないとは思ってたけど
そしたらさ私のために歌を作ったから聴いてくれって言われて…
全部は聞き取れなかったけどあれラブソングだったと思う
私すっごい恥ずかしかったよ!
私はこれ!お手紙もらってん!
見せられへんけどめっちゃ恥ずかしい内容やで
ラブレターやわ
ハイデンよ!
歌とか手紙のほうが恥ずかしいやろ!
謎の男ハイデン。
私は彼の音楽にとても感動しました。
彼が現在どうなったのかは分かりませんが、音楽で成功していて欲しいと今でもよく思います。
- [本物の写真ありました]
私は何ももらってないんだけど!
知らん。
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