アジアをまわってお金をほぼ使い果たした私は、新たなバックパッカー旅行のための『資金作り』と『英語力向上』の目的でカナダのトロントにワーホリで入国しました。
仕事探しはかなり困難を極めましたが、無事に良い職場と出会えました。
しかし働き始めてすぐに年末年始の8連休に入ってしまい、思うように稼げません。
さらに金欠の中遊びに行ってお金を使ってしまい、ほぼ無一文状態の私。
今回は新年最初の仕事の話。
前回▼
スポンサーリンク
キッチンスタッフとして調理場での在り方
おしんぽこ持論
私は仕事として調理場で働く以上、第一に意識すべきものがあると思っています。
キッチンメンバーはチームであり、仲間である。
すべてにおいて優先すべきはキッチン内の雰囲気と人間関係である。
当たり前のことですが、じつはなかなか意識出来ない部分です。
多くの料理人は
・お客さん第一
・自分の調理技術、知識
・売り上げ
・うまく店が回っているかどうか
・食材管理
・仕込み、その他の仕事
などの項目を意識せよと公言されています。
もちろん大事ですが、結局1人でできる仕事ではないのです。
なので何よりもまわりのスタッフのことを第一に考えることが大切なんです。
日本で何年か飲食店で働いて発見したことがこれです。
そしてかなりの持論ではありますが、絶対間違ってないと思っています。
韓国人シェフ・ケンと言う男
特筆するほど優れた人間ではありませんが、高校から10年以上トロントに住みそのままトロントで働いている男だけあって、ネイティブ並の英語力です。
キッチンスタッフとしての技術、知識は並です。
普通に包丁が使えて、普通に調理ができて、普通に常識的な衛生管理ができる人間です。
しかし私が思う『キッチンスタッフとしての在り方』がかなり間違っている男で、私と彼は年明け早々激しめにぶつかってしまいました。
料理人のタイプ
飲食店の調理場は殺伐としていて、常にピリピリしていることが多いです。
ましてや忙しい繁盛店であれば特にです。
「おい!急げ急げ!」
「やべ!こぼした!」
「え⁉︎4個なの?言ってよ!3しか作ってないよ!」
「うるせえ!言ったわ!」
「誰か皿洗える?」
「仕込み間に合ってない!」
「きゃー!!!」
週末の飲食店の中はいつもこんな感じです。
だからこそ助け合い協力し合いながら店を回していく必要があります。
そういった理由で私はチームワークと人間関係が一番大切であると考えています。
誰がミスったとか誰かのスピードが遅いとかどうだっていいんです。
俺の方が先輩だとか経験が長いなんてのはくだらない。
とにかくごちゃごちゃ言わず協力していかないと店は回りません。
一方で海外のキッチンは大きく違います。
日本と違い、値段設定がかなり高めなところが多いので人件費に金が使えます。
そうなるとキッチンはどうなるかというと、ポジションではっきり分かれ、助け合うことをしません。
まず『自分のテクニックが光っているかどうか』これを一番大事にしています。
そいつの技術など高級店のシェフでもない限りかなりくだらない事と私は考えていますが、ケンはまさにそのタイプ。
我々が働いている激安のカジュアルバーでこれだから困ったものです。
こういうタイプの人間は忙しくなるとどうなるかというと、自分の実力不足は棚にあげてまわりの立場的に弱い人間に理不尽にキレます。
さらにトロントで育ったとは言え性格は典型的な韓国人。
やっぱり感情的です。
私は日本でいくらでもキレる人間を見てきたのである程度は耐えていたのですが、あまりにも我慢できない状況があったのです。
大忙しの店でシェフと喧嘩
仕込みが追いつかない?
この日は新年1発目の営業日で、8連休の後。
食材をイチから仕込み直してからの営業スタートです。
私は年末の最終日の段階で仕込みが追いつかないことを伝え、いろいろと提案していました。
しかしケンはただただ何の根拠も無く私の提案を否定するのみだったのです。
これは年末最終営業日で8連休が始まる前日の営業終了後の会話。
もしくは前日に3時間だけでも仕込みをしないと、年明け初日の営業に絶対間に合わないですよ
私、来ましょうか?
たしかに8日もあるから今仕込んでるやつは使えないな
ケン!どうだ?
当日間に合わないなら何人かで前日に仕込みをするか?
間に合うっす!いつも通りで!
この男、とにかく仕事ギライ。
少しでも時間があれば休もうとします。
スープもイチからだし…エビもストックが…
絶対間に合う
いつも通りで
人件費使わせないっすよ!
まかしてください!
(ドヤ顔)
オーナーにカッコつけるその感じ。
人件費がどうのこうの言っていますが、ただ休みたいだけなのがバレバレです。
【旅行記78】で書いたように、この店は忙しすぎて営業中に仕込みをする暇もスペースもありません。
ただでさえいつもてんやわんやでカツカツなのに、十分に仕込みがされていない状況で営業するなど不可能なのです。
しかし
そう俺ならね(ドヤ顔)
といった感じでオーナーにカッコつけるケン。
そして年明け最初の営業日。
私はある程度想像していましたが、それを遥かに超える悲惨な日になってしまったのです。
Fucking Japanese くらい分かるよ!バカヤロ!
これは北野武の有名なセリフですが、まさにこんな感じの事件があり、私はシェフのケンと対立しました。
上記の通り案の定仕込みは間に合いません。
急げ~
私はアホですが調理場ではかなり手が速い方だと自負しており、特にその日はめっちゃめちゃ速く仕事をしました。
一方ケンはいつも通り偉そうに外で喫煙しておられます。
私やほかのスタッフは一切休憩せず全速力で仕込みをしましたが、オープン時間までにはっきり言って半分くらいしか終わらせることができませんでした。
そしてオープン時間の18時。
ケンは戻ってきます。
さあ新しい1年の始まりだ…
みんな気合い入れて今年も…
て、おい!
なにこれ?
全然終わってないじゃんか!
前日に仕込まないと間に合わないって!
俺はお前らを信じてたんだぜ?
しょうがない仕込みながらやるしかねぇな
こんな感じで営業スタート。
いつも通り一瞬で満席です。
おい!急げ急げ!
自分で切れ!
Fucking Japaneseっつってんだよ!
韓国ではこんなスピードが遅い仕事は許されないぜ?
カナダで良かったな!
Fucking Japanese!
とにかく急げ!
馬鹿ども!
こんな理不尽な事を言われても気にしないのがおしんぽこ流です。
感情的になり喧嘩してしている姿がかっこいいと思っている人種に関わっている場合ではないのです。
ここで言い返すと喧嘩になり、料理が遅れて他のキッチンメンバーとサーバースタッフに迷惑がかかります。
即ちそれはお客さんに迷惑がかかるということです。
ところがこの男。
理解できませんが、勝手にどんどんヒートアップして、もはやただのキチガイ料理人みたいになってしまったのです。
なんだよ?
無視すんな!
Fucking Japanese!
お前らが仕事遅いからこんなことになってんだろうが!
なんで仕込み終わってねぇんだよ!
クズ!Fuck!
そんな暇あったらなんか野菜でも切ってくれよ
もはや喧嘩を売っているだけのただのヤンキーです。
お店の料理場を任されている男が、手を動かさずただごちゃごちゃ言ってくるだけなのです。
「ほんっとしょうがねぇなクソども」
といった感じのかなりムカつくタイプのため息をついたあと、キッチンは変わらずめちゃめちゃ忙しいのに、外へ出て行ってしまいました。
この店に入ったときからケンのことをちょっとおかしいヤツだとは思っていましたが、ここまで感情をあらわにしたのはこの日が始めてです。
そして5分後、ケンが戻ってきたタイミングでまた大量にオーダーが入ってきました。
年明けも忙しいんやね!
するとその時!
ケンは完全にパニック状態。
そして大声で一言
ファッキンジャップ!
何ですかこれ?
オーダーがいっぱい入っていることにキレてるんですか?
それとも自分の不甲斐なさですか?
愛国心などない私ですが、ここまで国名でののしられると誰でも腹がたちます。
何にせよもはやこんなヤツは調理場にいないほうがマシです。
そこのクソメガネ野郎!
私はあんま英語分からんけどな
Fucking Japaneseくらい分かるよ!
まず手を洗えゴキブリ野郎!
その薄汚ねえメガネを触ったあとに食材触んな!
お前なんかおらんほうがマシや!
キッチンから出て行け
ついに私は言ってしまったのです!
一番いじっちゃいけないと言われているメガネを若干いじりながら!
私はひとこと言ったあとは無視を決め込みました。
これ以上言い合いをするのは圧倒的に時間の無駄。
冗談抜きで朝までやっても終わらないくらい仕事が溜まりまくっていたからです。
仕込みの方が溜まっています!
メガネ野郎の相手をしている暇などないのです
すると反撃してくるかと思いきや、態度を急変させた私に驚き
うそ…え?
みたいな感じで、ケンは本当に出て行ってしまったのです。
スポンサーリンク
おしんぽこクビになる
結局そのままケンは戻ってこず、いつも2時前には終わるところ、4時まで仕事をしてなんとか新年初営業日を終えることができたのです。
初日から疲れた!
更衣室に行くと、ケンがウイスキーのようなものを飲みながら呆然としていました。
しかもちょっと泣いています。
これは私の悪い癖ではありますが、自分の生活においてなんのメリットも感じない人間は無視してしまうのです。
特にこの日はさすがの私も完全に頭に血が上り、大人げなく無視を決め込んでしまったのでした。
(うわっびっくりした!)
シェフは俺だぞ?
シンは今日でクビで
もう明日は仕事ないよ
せっかく
見つけた
仕事
クビ
どうしよう…
今度は私が呆然としてしまい、そこから何も話すことなく-20℃の中歩いて帰ったのでした…。
前回▼
次回▼